腱鞘炎とは?
腱鞘炎とは、指の付け根や手首の近くにある腱鞘と呼ばれる部分に、何らかの原因によって炎症が起きてしまい、そのために痛みが生じる疾患です。
腱鞘というのは、指や手首の腱を包んでいる組織です。
この中には滑液という潤滑油が入っているために、正常であれば腱はスムーズに滑る事ができます。
しかし何らかの原因で腱鞘に炎症が起こったり腱が肥厚(太くなる)してしまうと、このスムーズな動きが失われて痛みが出たり、ひどい場合にはバネ指のような症状も出てきます。
腱鞘炎の起こりやすい筋肉は特に親指を動かす筋肉で、親指を外側に開く長母指外転筋、そして親指を伸ばす長・短母指伸筋などの腱の部分に好発します。
親指を他の4指で包むように握った状態で手首を小指側に曲げた時(フィンケルシュタインテスト)に、親指の付け根から手首にかけて痛みが出る場合は、腱鞘炎が疑われます。
普段症状が無いとしても、腱鞘炎の予備軍となります。
腱鞘炎の主な症状は、炎症の起こっている部位の痛み、そしてそれに伴う機能障害です。
また状態が悪い場合、明らかな腫れや熱を持っている事もあります。
特に親指は日常において様々な動きに必要なため、色々な場面で影響が現れます。
腱鞘炎の原因とは?
腱鞘炎において最も多く見られる原因は、指の使い過ぎです。
ですので日常や仕事で手を酷使する人、また最近ではパソコンやスマホを良く使う人に発症しやすいです。
その他には、まれにガングリオンなどの良性腫瘍によって腱が圧迫されて起こるケースもあります。
また妊娠後期から出産後の女性、中年期以降の女性に頻発するため、女性ホルモンの変化による腱の浮腫によっても、腱鞘炎になりやすくなってしまいます。
腱鞘炎の一般的な治療法
基本的な治療として手首や指を動かさず安静にし、装具を用いて手首が曲がり過ぎないようにする事もあります。
その他に消炎鎮痛剤やビタミン剤などの服用、湿布などの保存療法が行われます。
重症の場合やこれらの治療に効果がない場合は手術を行う事もあります。
腱鞘炎は主に使いすぎによる炎症のために痛みや機能障害が起こるため、使わずに安静にすれば症状は改善しますが、現実的にそれは難しいと思います。
またいくら安静にして痛みが消失したとしても、また使い過ぎてしまうと再発する事が多いため、後述する根本的な原因の治療が必要となってきます。
腱鞘炎の東洋医学的考え
腱鞘炎に限らず東洋医学において、痛みが起こる原因は大きく分けて2種類考えられます。
1つは何らかの原因により経絡の流れが悪くなるために起こる痛み(不通即痛)、もう1つが栄養やエネルギーが不足し経絡が栄養されないために起こる痛み(不栄即痛)があります。
経絡とは「気血」というエネルギーや栄養を全身へ巡らせる通路であり、特に手の親指には「肺経」や「大腸経」と言う経絡が通っています。
ですのでこららの臓器が弱かったり機能異常がある時に腱鞘炎になりやすくなります。
話は戻って、経絡の流れが悪くなって起こる痛みは、例えば寒く風のあたる環境に長時間いた時に「風寒の邪」に当たってしまったり、湿度の高い環境で「湿邪」に当たってしまったり、親指や手首を酷使したりすると、これら経絡の気血が滞り痛みが起こってしまいます。
また持続的なストレスを受け続けたりすると「肝」機能が低下し、気血を全身に巡らせる事が出来なくなり、同様に滞りが生じてしまいます。
こう言ったケースでは、それぞれの原因を取り除く効果のあるツボを使って「邪気」を取り除き、また局所のツボや手の親指を通る「肺経」「大腸経」などのツボを使って局所の気血の流れを改善する治療を行います。
栄養不足やエネルギー不足によって起こる痛みの場合、それらが不足してしまう原因の治療を行います。
状態にもよりますが、多くは「脾」「腎」という臓器の機能低下によって起こります。
これらの臓器はエネルギー生成に深く関わり、まだ持続的なストレスや加齢によってどんどん機能が低下していきます。
ですのでこれらの臓器の機能を改善させるツボを使う事で根本的な体質改善を行う事が重要です。
その上で上記の経絡上のツボを使い、局所にエネルギーが集まるような治療を行います。
腱鞘炎に対する三軒茶屋α鍼灸院の治療
三軒茶屋α鍼灸院の治療は大きく2つの側面から行って行きます。
1つは上記に挙げた東洋医学的側面から診た治療、そしてもう1つがトリガーポイント治療です。
東洋医学的な治療は上記にある通りに行っていきます(全員に必ず行うわけではなく、体質を診て腱鞘炎に深く関わっているケースでは併用していきます)。
トリガーポイント治療とは、一般的な整形外科で考えられている原因とは違い、腱鞘炎による痛みを引き起こしているのは、筋肉や筋膜に形成されたトリガーポイントによるものだという考えのもとに治療を行っていく治療法です。
トリガーポイントとは筋肉内に出来た頑固なコリや筋肉を包む膜(筋膜)の歪みの部分です。
これらは筋肉の使い過ぎや筋膜が引っ張られた状態での負荷がかかる事で形成され、このトリガーポイントが形成されると痛みを発生させます。
特に腱鞘炎の痛みや機能障害を引き起こすトリガーポイントとして、先にも出てきた長母指外転筋や長・短母指伸筋と言った、親指の動きに関与する筋肉に形成されたトリガーポイントが挙げられます。これらの筋肉は前腕部から起こっているため、痛みのある局所だけではなく、筋肉に沿って前腕部の治療を行っていきます。
時には橈側手根屈筋、長・短橈側手根伸筋と言った手首の動きに関わる筋肉のトリガーポイントが原因となる事もあります。
これらのポイントを鍼にて緩める事で、痛みと動きを改善させます。
そしてもう一つ重要なのが、この局所のトリガーポイントを形成させてしまう原因に対してもアプローチしていく事で腱鞘炎の再発を防ぐ事が出来ます。
特に腱鞘炎の場合、肩甲骨周りや肘周り、胸部の硬さや機能障害があると、前腕部の筋肉に過剰な負荷をかけ、トリガーポイントを形成させてしまいます。
ですので、合わせて肩甲骨周り、肘周り、胸部の部位を丁寧に触診し、合わせて治療して行きます。
このように局所だけでなく、親指に影響を与える部位を含め、全体的な治療を行っていくことで、痛みの改善はもちろん、再発しづらい体づくりができます。