BPPVとは?
BPPVとは良性発作性頭位めまい症(Benign Paroxysmal Positional Vertigo)の略称です。
名称の通り、めまいが主訴となる疾患で、めまいが起こる疾患の中でもっとも頻度が高い疾患の一つとされています。
症状はグルグル回る「回転性めまい」がメインとなります。
そして「頭位」とつくように、頭の位置によってめまいが起こります。
ですのでかがむ時、寝る時や起き上がる時、寝返り、横に振り向いた時などにめまいが誘発されるのが特徴です。
また回転性めまいがあるため、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
ただメニエール病と違う部分として、難聴や耳鳴りなど、いわゆる聴覚に関する問題は起こりません。
同じ内耳の問題ですが、BPPVはその中でも平衡感覚を司る「前庭」と言う部分の問題になります。
通常めまいの発作時間は短く、数秒〜1分以内におさまる事が多いです。
.
BPPVのメカニズム
耳の内部には内耳と言う部分があります。
その中に皆さんも聞いた事があると思いますが「三半規管」と言う部分があります。
この部分の中はリンパ液で満たされていて、付け根の部分には感覚を司るセンサーがあります。
頭を動かすと三半規管内部のリンパ液が移動し、付け根のセンサーを押し込みます。
するとセンサーが感知して脳へ信号が送られて、「頭が回転した(動いた)」と認識します。
これが回転性の平衡感覚を感じるメカニズムです。
そしてこの付け根の部分にはもう一つの平衡感覚「並行運動」を司るセンサーもあります。
それが「耳石」というものです。聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれません。
この耳石はカルシウムで出来ているのですが、何らかの原因によって剥がれ落ちてしまう事があります。
そしてこの剥がれ落ちた耳石が三半規管の中に入ってしまう事があります。
その耳石が三半規管の中に入ると、頭を動かした時に起こるリンパ液の流れが耳石の重さ分、増幅されてしまい、実際にはそんなに動いていないのに激しく動いた(頭が回転した)と脳が誤って認識してしまい、それがめまいとなって現れます。
それがBPPV(良性発作性頭位めまい症)のメカニズムです。
.

体と言うのは精密にできていて、平衡感覚は三半規管だけで感知している訳でなく、目(視覚)や首の筋肉内にあるセンサー、足裏にあるセンサーなどもあります。
これらの情報が脳内で統合されるのですが、これらの情報が一致していないと脳が誤って認識してしまいます。
どういう事かと言うと目から入る情報、三半規管からの情報、首や足裏からの情報が全て内容や程度が一致していない場合にめまいとして現れると言う事です。
BPPVではこれらの部分からの情報が一致しないためにめまいが起こります。
例えば目で感じる頭の動きと三半規管で感じる頭の動きの量や速さなどがズレているたまにめまいが生じます。
(耳石の影響により実際の動きの量に比べて三半規管の感知する量が増幅してしまうため、目からの情報とズレてしまう)
.
BPPVの鍼灸施術
BPPVでは目、首、三半規管からの情報が一致してないためにめまいが起こります。
そのため首や目のセンサーの感度を正常化し、三半規管からの誤情報に対して柔軟に対応できるようにしていきます。
具体的にはまず首の筋肉の緊張を正常化します。
首の凝りや緊張が強いとめまいが起こりやすくなるためです。
ただし首に直接打つ事はほとんどありません。
なぜなら首の緊張は他の部分(例えば背中や殿部、手足など)から影響を受けているからです。
そのため関連する背中や殿部、手足のツボ反応を確認し、必要なツボを用いて首の緊張を正常化していきます。
次に目の動きを調整していきます。
BPPVは眼振(目の動きを調整する筋肉の異常により、目で端を見る時に目が震える現象)が原因であると言う研究もあります。
またサッカード現象と呼ばれる、目で側方を見る時にスムーズに眼球が動かず飛び飛びに動くような状態もめまいと関連してきます。
そのため目の動きに関するツボを使い、眼球運動を正常化していく事も重要な要素になります。
.

耳石が剥がれないようにするには?
耳石に関しては鍼では対応できません。
耳石はカルシウムで出来ていますが、体内のマグネシウムが少なかったり、カルシウムが過剰になっていると、カルシウムが溶解してしまいます。
つまり耳石が脆くなり剥げ落ちてしまう原因となるんです。
そのためサプリやエプソムソルト(入浴剤。マグネシウムは皮膚からも吸収できる)などでマグネシウムを補う事も重要になってきます。
.
