他覚的耳鳴り
振動性耳鳴りとも言い、中耳にあるアブミ骨筋や鼓膜張筋が痙攣する事で起きる筋肉性雑音と、耳周囲の血管の異常(動脈瘤など)によって起きる血管性の雑音がある。
どちらも体内に音源がある。
自覚的耳鳴り
原因不明とされる事が多く、難聴に伴い生じる方が多い。
他覚的な耳鳴りとは反対に非振動性耳鳴りとも言われる。
症状からみる耳鳴り
1.突発性難聴
→高度な感音難聴、めまいと共に耳鳴りも出現する
2.メニエール病
→反復する回転性めまい発作に伴い難聴.耳鳴りが出現する
3.聴神経腫瘍
→耳鳴りが出現し、片側性の進行性感音難聴と耳鳴りを伴う
4.筋性耳鳴り
→ポコポコ.パチパチ音
5.血管性耳鳴り
→血管の拍動とほぼ同じリズムで鳴る
随伴症状
難聴.めまい.自律神経失調.頸肩部の筋の過緊張.不眠など
東洋医学で考える耳鳴り
耳と五臓六腑の「腎」は深い関係がある。
感覚機能(聴力)は髄海(脳)に繋がっており、髄海(脳)の機能が維持される事で五官(目.舌.口.鼻.耳)は正常に働く。
「腎」の精気の不足により、髄海の滋養が不十分だと難聴.耳鳴りがおこる。
手の少陽三焦経や足の少陽胆経が耳へ流注する為、手足の少陽経が治療ポイントとなる事も多い。
*髄海とは…「髄」は骨の中に存在し、骨は「髄」により滋養される。「髄」は骨髄と脊髄に分けられ、脳は「髄」の集まりであることから、別名「髄海」と言われている。
急性で高音.音が大きい場合は実証、症状は徐々に起こり低音.音が小さい場合は虚証とみる。
実証
「肝火上炎」
五臓六腑の「肝」の疏泄機能の失調により「肝鬱気滞」となり肝火が上炎することで耳竅(耳の穴を含む清気の通り道)が閉塞し耳鳴りが起きる。
頭部.顔面部に症状が出やすく、顔面紅潮.目赤などの熱証症状が顕著であり、精神的ストレスなどでも悪化し症状は波がある。
「痰火鬱結」
油物.味つけの濃い物.甘い物(スイーツ類)などは五臓六腑の「脾」の運化機能を失調させる。
脾の運化機能が失調すると身体の中の水液代謝機能も失調し、痰湿が生まれる。
邪鬱化火に生じた痰火が炎上し頭部に昇ると耳鳴りが起こると考える。
虚証
「腎精不足」
先天性の腎精不足.加齢.栄養の吸収不良などにより腎精が不足すると、髄海(脳)の滋養が不十分になり耳鳴りが起きる。
腎精不足が慢性化すると「腎陰虚」となり虚熱の症状(五心煩熱.のぼせ.寝汗など)が見られる場合もある。
鍼灸治療の前に…
耳鼻科の受診をおすすめする。
手足のしびれ.脱力.複視などの症状は注意が必要。
小脳障害.運動障害.感覚障害.嚥下障害.構音障害.視力障害.意識障害が見られる場合は必ず耳鼻科の受診が必要。
鍼灸治療
ストレス.過労などで症状が出る可能性もあるため疲労軽減の目的や、肩こり.頸こりが耳鳴りの憎悪因子である場合は、筋緊張の緩和や血流改善の目的で治療を行う。
また、自律神経機能と耳鳴りの関連性もあり、自律神経機能の調整を目的とした治療も合わせて行う。
「肝火上炎」による耳鳴りがある場合は「清肝瀉火」をはかり、太衝穴.肝兪穴.行間穴.丘墟穴などに瀉法の治療を行う。
「痰火鬱結」による耳鳴りがある場合は「瀉火化痰」をはかり、合谷穴.内庭穴.豊隆穴.陰陵泉穴などに瀉法の治療を行う。
また、太白穴.脾兪穴に補法を行う事で「建脾益気」をはかる。
「腎精不足」による耳鳴りがある場合は「補腎填精」をはかり、太渓穴.腎兪穴.気海穴に補法の治療を行う。
耳鳴りでお困りの方へ
1.十分な睡眠.軽い運動を行う。
2.耳鳴りから意識をそらす。
3.暴飲暴食を控える。
油物.味つけの濃い物.甘い物などは五臓六腑の「脾」の運化機能を失調させ「痰火鬱結」の原因となるため、控えめに。
辛い症状を我慢なさらず、鍼灸治療をご検討の方はお気軽にお問い合わせください。