顔面神経麻痺で1番多いのは…
末梢神経麻痺の中でもベル麻痺は約70%、ハント症候群が約15%、それ以外は外傷性.腫瘍性.耳炎性などがある。
①両側性顔面神経麻痺:運動神経疾患(ex.ディジェンヌ型筋ジストロフィー.ギランバレー症候群)
②片側性顔面神経麻痺:
1.中枢性(ex.脳血管障害)
大脳皮質から顔面神経核までの神経走行中に脳出血や脳梗塞などにより神経が障害されて生じる。
[鑑別] 中枢性→前額部のしわ寄せ可能
2.末梢性(ex.ベル麻痺.ハント症候群)
顔面神経核またはそれより末梢で障害されて生じる。
[鑑別] 末梢性→前額部のしわ寄せ不可能
*末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)
顔面神経麻痺の中で最多であり突然発症する。
原因は明確ではないが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が潜伏感染して疲労や免疫力低下時に再活性化する事で炎症する。
症状は、前額部のしわ寄せ不能.閉眼不全.口角が下がる.味覚障害.聴覚過敏.唾液と涙分泌障害など
発症から2日以内が最も筋力低下が起きやすい。
*末梢性顔面神経麻痺(ラムゼイハント症候群)
原因は、帯状疱疹ウイルス(VZV)が潜伏感染し、疲労や免疫力低下時に再活性化する事で炎症する。
症状は、表情筋麻痺症状.耳痛と外耳道に帯状疱疹.痛みが強いのが特徴。めまいや難聴.耳鳴りなども起きる。
ベル麻痺よりも重症化しやすい。
鍼灸治療
鍼灸治療は、顔面の血行を促進させ表情筋の萎縮を防いで神経機能を回復促進させる目的で刺鍼する。
治療穴は、翳風穴.聴会穴.下関穴など顔面神経の走行上にある経穴を使い、後遺症の出現を抑制させる目的で表情筋に位置する経穴などに治療をする。
東洋医学で考える顔面神経麻痺
東洋医学における末梢性顔面神経麻痺は身体に風邪(ふうじゃ)が侵入することで、気や血を滞らせ顔面部の肌肉が弛緩し、顔面麻痺とされる。
主に目や口もとに症状が出現するのは、その部位に経絡が流れているためで、目は足の太陽経(膀胱経).足の陽明経(胃経)、口は手の太陽経(小腸経).手と足の陽明経(三焦経.胃経)が分布し、経絡の機能失調が原因であると考えられる。
病因となる風邪(風邪)は風寒.風熱の2つからよるもので、慢性化すると気や血が不足し顔面部は機能しなくなる。
①風寒
発症初期にみられることが多く、顔面に冷たい風を受けた後、突然発症することが多いとされる。
透明の水様鼻汁症状を伴いやすい。
②風熱
発症初期にみられることが多く、感冒後に突然発症することが多いとされる。
頭痛や口喉の乾燥症状を伴いやすい。
③気血不足
回復期.慢性期。
顔面部の肌肉のこわばり引きつりなどの症状がある。
予後は…
末梢性顔面神経麻痺では発症から2週間程度の急性期の治療で予後に大きく影響する。
重症度により予後は異なり、後遺症が必発するとされ、また発症から4ヶ月以降の回復期や半年後の慢性期では後遺症はすでに出ていることが多い。
医療機関を受診されてない急性期はまず医療機関への受診をおすすめし、発症の期間を考慮して、治療計画を立て、治療をしていく必要がある。