整形外科での腱鞘炎治療
腱鞘炎は女性ホルモンの影響で妊娠・出産・育児中に起こりやすいとされています。
またもともと女性に多く見られる症状です。
ですが男性でも使い過ぎによって起こる事もあります。
腱鞘炎は親指の付け根や手首の親指側に起こりやすいのですが、他の指にも起こりますし、手首の小指側の痛みも腱鞘炎と言われる事があります(厳密には腱鞘炎ではない)。
腱鞘炎はひどくなるとバネ指と言われる症状が出て来る事もあります。
バネ指は指を曲げ伸ばしする時にカクンカクンと引っかかる状態になります。
一般的には痛み止めの薬、湿布、サポーターなどを処方され、もちろん安静にするよう指導されます。
症状がひどい場合やなかなか改善されない場合は、患部へのステロイド注射や局所麻酔が行われる事もありますが、腱は脆いため数回しか行えない治療となっています。
また患部の炎症を抑えて症状を緩和する治療なので、なぜそこに負担がかかり痛みが出ているのか、という根本的なアプローチではないため、再発しやすいのが問題です。
最終的には腱を包んでいる腱鞘(けんしょう)を切る事で、腱がこすれるのを防いで炎症を無くしていく手術もあります。
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腱鞘炎の鍼灸施術
鍼灸施術の方法は東西問わず様々な流派があるため、西洋医学のように腱鞘炎これだと言う施術法や統一された方法はありません。
それぞれの観点から腱鞘炎の原因を探り施術していきます。
ただ局所的な施術、あるいは対症療法的な施術はあります。
例えば腱鞘炎が起こっている腱が長母指外転筋の腱だとすると、この長母指外転筋に鍼を打つ事でこの筋肉を緩めて患部の負荷を減らしていこうと言うものです。
軽い腱鞘炎であればこのように原因の筋肉に対してアプローチするだけで良くなる事もあります。
ただある程度の重症度だとこれだけでは良くなら無いことが多いです。(施術後は割と痛みが引いても使うとすぐに戻ってしまうなど。)
ですので、腱鞘炎の根本的な解消にはもう少し視野を広げる必要があります。
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特殊な鍼灸施術
手や指は上腕の骨を介して肩甲骨に連結しています。
また肩甲骨は唯一鎖骨と連結していて、それが胸の骨に連結しています。
つまり腕は鎖骨を介して体幹と連結している状態であり、鎖骨の動きの影響を受けます。
鎖骨が動きづらい状態だとその先にある腕や手首、指に負担がかかりやすくなるのです。
また体幹の軸は背骨です。背骨が滑らかに動く事で、手足も滑らかに動くように出来ています。
腱鞘炎の施術ではこの鎖骨と背骨の動きをスムーズにすることが重要になってきます。
例えば母指であれば胸椎1番や第2肋骨、鎖骨の影響を受けます。
そして関連する部分を鍼で緩め、動きを出す事で指や手首の負担を減らし、痛みが軽減していきます。
患部は結果として痛みが出ている部分なので、根本的な原因へアプローチしていかなければ、再発しやすくなってしまいます。
ちなみに安静が1番悪い方法です。
安静にすればするほど関節周囲の筋膜が硬直しそれが発痛の原因になる事、そして安静にしていてもいざ使い出すとまた痛くなってしまう事が理由として挙げられます。
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症例
40代女性
半年前から右親指に時々痛みを感じていたが、休めれば良くなっていた。
1ヶ月くらい前に書く作業を長時間こなした後から親指の痛みが酷くなり、それからは親指を使う度に痛みが出るように。
整形外科で腱鞘炎と診断されるも痛み止めでは良くならず当院に来院。
安静時痛はない。物を書く時、スマホをいじる時に特に強く痛む。
背中や肩甲骨周りが硬い。
初診時は右胸椎1番の動きを出す施術を行い、痛みが半減。
2〜4診目も同様の施術を行い、毎回痛みの強さや頻度が減っていっている。
5診目に肩甲骨際のツボを使うと痛みがほぼ消失。
その後別の症状で来院されるも、親指の痛みは再発していないとの事。
この方も典型的な症状で、やはり背中周りに特有の固さが見られました。
そのためその固さを取り、動きを出す事で親指の負担が減って痛みが消失したと考えられます。
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執筆者
三茶はりきゅう院 院長
山﨑 智史(やまざき さとし)
保有資格
理学療法士・鍼灸マッサージ師
主な講習会参加歴
・MTPトリガーポイント鍼治療 初級中級コース修了
・筋膜マニピュレーション国際コース 全コース修了(延300時間以上)
・整動協会 基礎編 応用編修了
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