突発性難聴とは

左右どちらか一方(稀に両方の場合もある)の耳が突然聞こえにくくなる、厚生労働省が定める特定疾患の一つでもあります。
突然音を感じ取りにくくなる感音性難聴で、原因がはっきりしない感音性難聴の総称であり、耳鳴りやめまいを伴うことの多い疾患です。

耳が聞こえる仕組み

外耳：音を集めて鼓膜まで伝える
↓
中耳：音を増幅する
↓
内耳：音の振動を電気信号に変換する
↓　☆有毛細胞(蝸牛の中でリンパ液の振動を受け、その刺激を電気信号に変える)
蝸牛神経を介して
↓
大脳へ伝える

原因

内耳にある有毛細胞(音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役割を担っています)が、なんらかの原因で傷つき、壊れてしまうことで起こると考えられています。
有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や、ウイルス感染が原因であると考えられていますが、まだ原因は明らかになっていません。

ストレスや過労、睡眠不足、多量の飲酒などがあると起こりやすいとされています。
また、糖尿病が影響しているともいわれています。

症状

・耳閉感
・耳鳴り
・めまい
・吐き気
などを伴うことが多いです。

難聴やめまいが起こるのは1度だけで、メニエール病のように繰り返すことはありません。

治療方法

生活リズムを整え静かな環境でゆっくり心身ともに休めることが大切です。

〈薬物療法〉
・副腎皮質ステロイド:血流障害によって起こる細胞のむくみや炎症を抑える効果
・血管拡張薬:血流改善効果
・代謝改善薬
・ビタミンB12　など

しかし、様々な治療を行っても改善がみられない方が全体の2割ほどいることが知られています。

早めの治療が大切

できるだけ早く治療を開始することが重要です。
耳に血流障害が起きて血液の流れが長い時間滞ると、酸素不足により内耳の有毛細胞が壊れてしまいます。
この有毛細胞は音波を電気信号に変えて脳へ送る役割をしていますが、一度壊れると再生しないため、治療が遅れると、聴力の障害がひどくなり治療が困難になると考えられています。

☆発症から1か月程度で内耳障害が不可逆的なものになり症状が固定してしまうため、発症から1〜2週間以内に治療開始することが重要となります。

東洋医学的考え方

東洋医学では、五臓六腑の「腎」は耳に開竅する。
と言われ、深い関係にあります。

東洋医学の「腎」は、西洋医学とは違った役割を持っています。
「腎」の役割は、生長・発育・生殖・水液代謝を主ります。

中でも、「腎の精気」は聴覚と関係が深く、少ないと聴覚機能は減退してしまいます。
「腎の精気」は、年を重ねるごとに減少していく傾向にあり、高齢者の聴覚は衰えていきます。

また、東洋医学では「腎」と「肝」はとても深い関係にあり、「肝腎同源」ともいわれます。
「腎」の機能が低下すると、それを補おうとして「肝」の機能も低下します。
「肝」は蔵血作用を主り、この「肝」の機能低下は、血流低下にも繋がります。
内耳の血流が低下すると、聴覚に影響し突発性難聴の原因にもなると考えられます。

当院での鍼灸治療

まず鍼灸治療の第一の目的は、耳の周りを鍼灸で刺激することにより内耳の血液循環を改善することです。
耳周辺の治療穴として「翳風」「耳門」「聴会」「聴宮」などを用います。
内耳の血流不足を改善するという点から、頸肩部周辺や耳周辺の経穴にも鍼をして筋緊張を緩めることで循環の改善を図ります。

また、背部にある「腎」や「肝」の重要なツボを刺激することで、「腎」「肝」の機能回復を促します。

併せて、全身の調整を図り自律神経のバランスを整えることで、人間が本来持っている自然治癒力を高めます。
鍼灸治療は、交感神経を抑制し副交感神経の働きを促すばかりでなく、双方の神経の活動量を高めて自律神経のバランスを整えることができます。

耳に優しい生活

・大音量でテレビを見たり音楽を聴いたりしない
・騒音など、大きな音が常時出ている場所を避ける
・騒音下で仕事をしている方は耳栓をする
・静かな場所で耳を休ませる時間を作る
・生活習慣の管理：栄養バランスがとれた食事。適度な運動。規則正しい睡眠。禁煙。など