円形脱毛症とは
ある日突然、円形や楕円形の様な脱毛巣が生じる疾患です。一般的に10円玉ほどの脱毛と思われがちですが、頭部全体に広がるものや体毛、眉毛やまつ毛などが脱毛するケースもありその症状は様々です。円形脱毛症は進行度合いによりいくつかのタイプに分類されます。
単発型
円形脱毛症の中で最も多いといわれている種類です。性別や年齢にかかわらず発症し、治療せず放置しているとさらに深刻なタイプの脱毛症に進行していく場合も少なくありません。ある日、何の前触れもなくコインの様な円形、または楕円形の脱毛斑が現れる事が特徴です。また、頭髪だけでなく、眉や体毛などに現れる事があります。
多発型
コイン状の脱毛斑が、複数発症することが特徴の円形脱毛症です。単発脱毛症が進行する事で発症することが多いと考えられています。症状が進行すると脱毛斑が拡大しながら融合することで、1つの巨大な脱毛斑を形成する「多発融合型」に発展する場合も少なくありません。
全頭型
脱毛斑が頭部全体に渡り広がり、頭髪がほとんど抜け落ちてしまう脱毛症です。最終的には完全に抜け落ちてしまう場合もあります。単発型から多発型、全頭型へと進行していくため前兆には気付きやすいですが、円形脱毛症の中でも治療に多大な期間を要するとされています。
蛇行型
後頭部から側頭部の生え際にかけて、細長く蛇行するように脱毛斑が広がっていく症状です。脱毛斑の範囲が大きいため症状が早く進行しやすく、治療には時間がかかり、複数年に渡っての治療を要する場合もあります。
汎発(ばんぱつ)型
円形脱毛症の中でも最も重症とされており、頭部のみならず、まつ毛、眉毛、わき毛や陰毛など全身の体毛が抜け落ちてしまう深刻な症状です。
症状がかなり進んだ円形脱毛症のため、長期間に渡る治療が必要と言われています。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因はいまだ完全には解明されていませんが、近年では髪の毛の毛根組織に対し免疫機能の異常が発生する「自己免疫疾患」を原因とする説が有力です。「自己免疫疾患」とは、体を守るために備わっている免疫システムの異常により、自分自身の細胞を異物と誤認識し、攻撃してしまう状態を指します。免疫細胞であるTリンパ球が毛根の細胞を誤って異物と認識し攻撃する事により炎症が起こり、その炎症により毛根が損傷し髪の毛が抜け落ちてしまうと考えられています。この免疫細胞による毛根への攻撃が長期間続いた場合、毛乳頭細胞や毛母細胞などが受けるダメージは大きくなり、毛が抜けるだけでなく新しい毛も生えてこなくなってしまうのです。自己免疫疾患の原因は完全に解明されていませんが、ストレスにより自律神経や内分泌のバランスが崩れる事が関係していると考えられています。ストレスは「精神的ストレス」と「身体ストレス」の二通りに大きく分けられますが、このどちらも円形脱毛症に関連する可能性があります。
「精神的ストレス」とは仕事や家庭、人間関係などの問題により精神的にかかる負担の事です。それに対し「身体的ストレス」は、暑さ、寒さ、疲労などにより身体面にかかる負担を指します。
ストレスは「自律神経」、「内分泌の働き」に影響を及ぼすといわれています。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の二つがあり「交感神経」は活発に活動している時、「副交感神経」はリラックスしている時に働きます。この二つのバランスで様々な身体機能が調節されていますが、この自律神経は身体の免疫機能の調整に深く関与しています。そのため、自律神経のバランスが崩れると免疫機能のバランスも崩れる原因になります。また、交感神経が過亢進すると血管が収縮し頭部への血流も悪くなり、毛根への栄養供給が行き届かなくなる原因にもなります。
「内分泌」とはホルモンが血液に乗り体を巡る事です。ストレスを受けることにより脳から副腎を刺激するホルモンが分泌され、その刺激により「コルチゾール」というホルモンの分泌が促進されます。コルチゾールには免疫機能を活性化させストレスから身を守る働きがあるのですが、ストレス状態が続くとコルチゾールの分泌が過剰になり免疫機能のバランスを崩してしまいます。
その他にもアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質、インフルエンザやエイズなどの感染症なども原因として考えられています。また、女性の場合は妊娠から出産後における女性ホルモンの減少も原因の一つとされています。妊娠中は体内の女性ホルモンが通常の100倍以上に増加しています。女性ホルモンには発毛促進の作用があり、逆に減少すると抜け毛に繋がる事から、毛周期との関係上産後3~4カ月後に抜け毛が多くなると言われています。
円形脱毛症の治療
円形脱毛症の治療は病院の「皮膚科」や髪の専門病院で受けることが出来ます。
ステロイド内服
ステロイドにより皮膚の炎症を抑え、免疫の活動を抑制させる効果があります。
ステロイド局所注射
炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを脱毛斑に注射で注入する治療法です。
局所免疫療法
人工的に頭皮に一種の弱いかぶれを起こす化学試薬を塗布し、免疫機能の矛先を変える事で発毛を促す治療法です。
紫外線療法
頭皮を医療用の紫外線を脱毛部分に照射し、毛根を攻撃するリンパ球の活動を抑制させて脱毛を阻止する療法です。
冷却療法
ドライアイスや液体窒素を脱毛部分に当てて軽い凍傷を負わせることにより免疫機能をそちらに集中させ発毛を促す療法です。
円形脱毛症の東洋医学的考え
東洋医学では髪は血余(けつよ)と考えられています。つまり、毛は血の余りから作られると考えられており、髪に栄養を与えているのも血と考えます。そのため、血が足りなくなる「血虚」の状態や、血の巡りが滞る事で頭部の血の巡りが悪くなり、毛髪を栄養出来なくなると考えられています。
また、毛の強さと発毛には五臓六腑の「腎」と「肝」が大きな影響を与えていると考えられています。肝と腎は片方だけ悪くなるという事は少なく、肝腎は相互に滋生しあい、協調と充足が維持されており、このことを「肝腎同源」と称します。腎は人体の生長や発育、生殖に関わる臓器で、腎の気が弱ると髪が細くなり潤いが無くなってくると言われています。また、ストレス等により「気」の流れを支える代表的な臓腑である「肝」の気が障害され気滞が起こると、気と一緒に体内を巡る血の巡りも悪くなり、毛髪に栄養や酸素が十分に届けられなくなり脱毛に繋がる原因となると考えられています。
三軒茶屋α鍼灸院での治療
まず、最初に血管の状態や自律神経のバランスを測定する機械でお身体の状態を診させて頂いてから治療に移ります。
鍼やお灸を用い、自律神経の調整と東洋医学的観点から肝、腎を中心とした五臓六腑の働きを整える治療を行い免疫機能の正常化を促します。また、首肩周囲の筋緊張を緩め、脱毛斑やその周囲のツボに直接鍼やお灸で刺激を与えて患部の血液循環を促進し、発毛を促す治療を行います。