「アトピー性皮膚炎」と鍼灸

アトピー性皮膚炎とは

日本皮膚科学会によるとアトピー性皮膚炎とは、「増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ（アトピー性皮膚炎診療ガイドラインより）」と定義されており、簡潔に説明すると強い痒みのある湿疹が全身に現れ、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚疾患です。
皮膚の赤み、カサカサと乾燥した皮膚、ブツブツができるといった症状が約2ヶ月間以上続き、乳幼児から大人になるで症状が続く方もいます。
子どもの頃に発症し、大人になるにつれて改善していくケースが一般的ですが、最近では大人のアトピー性皮膚炎も増加傾向にあり、体質はもちもん、生活習慣が影響して突然発症ケースも少なくありません。強い痒みが伴うため、無意識のうちに掻いてしまうと症状が悪化します。速やかに、専門医の診断を仰ぎ、適切な治療をしましょう。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の明確な原因は解明させていませんが、アレルギー疾患の一つとされ、アレルゲン(ハウスダスト、ダニ、花粉、食べ物など)が原因となり発症します。

通常、皮膚には「バリア機能」と呼ばれる、異物を体内に侵入させない機能が備わっているのですが、この皮膚のバリア機能が低下したときにアトピー性皮膚炎が引き起こされます。
また、家族や自分自身にアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく、結膜炎のいずれかを患っている方は、アレルギー反応に対する抗体を作りやすく、遺伝的にアトピー性皮膚炎になりやすい体質と言われます。

以上のような環境的要素が原因でアトピー性皮膚炎が発症するケースがほとんどですが、心理的なストレスが原因で発症したり、アトピーが悪化したりといったケースも増えています。アトピー性皮膚炎に悩む方の多くは、強いストレスを抱え、さらには「うつ病」のような精神疾患を患う方もいます。アトピー性皮膚炎の治療の悪循環を防ぐためにも、心のケアも並行して行うことが大切です。

アトピー性皮膚炎の年齢別に見た症状

アトピー性皮膚炎は全体的に皮膚が乾燥肌であり、湿疹は体の左右対称に現れることが特徴です。また、年齢によって症状が出る場所が異なります。

●乳幼期(満1歳未満)　
頭皮、頬、口周り、耳、首の付け根

●幼児期〜児童期(1歳〜11.12歳)
首、肘や膝などの関節部分

●思春期〜成人期(13歳〜)
顔、首、胸、背中の上半身

大人のアトピー性皮膚炎は、強い痒みに加えむくみのような腫れや、赤みが強く出る症状があります

アトピー性皮膚炎と西洋医学

アトピー性皮膚炎は医師の診断をもとに、重症度に応じて治療を進めていきます

薬物療法

薬物療法では外用薬、内服薬を用いて治療を行います。重症な方はは入院が必要となる場合があります。

外用薬は炎症を鎮静するためのもので、ステロイド外用薬とタクロリムス外用薬があります。湿疹が悪化する前に定期的に上記の外用薬を塗り続けることにより、長期的に良い皮膚の状態を保つ「プロアクティブ療法」が用いられます。

内服薬はかゆみを抑えるための、抗ヒスタミン薬が用いられます。痒みをコントロールすることにより、掻きむしりによる症状の悪化を防ぎます。しかし、眠気が強く出る薬剤もあるため、医師との相談が必要です。

外用薬や内服薬でも思うような効果が現れない、重度のアトピー性皮膚炎の方は生物学的薬剤「デュピクセント(デュピルマブ)と呼ばれる、皮下注射が使用可能となり、安全性の高い治療法が導入されました。

スキンケア

皮膚の乾燥により、バリア機能が低下しやすくなります。そのため、保湿剤による皮膚の保湿を継続的に行うことが大切です。また、皮膚を清潔に保つための入浴、洗浄もしっかり行いましょう。お湯の温度は38〜40度が理想とされ、すすぎ残しがないように十分にすすぐことが大切です。